緊急地震速報、伝え方に課題 低い認知度
「地震発生、強い揺れが来ます」――地震の初期微動をとらえ、揺れが来る前に知らせる気象庁の「緊急地震速報」が、今年秋からテレビやラジオ、防災無線で流れるようになる。気象庁が開発を始めて20年余り。全国民を対象にした世界的にも例がない防災システムが動き出す。しかし、認知度は低く課題も多い。
●認知は1割余り
「あと10秒で揺れが来ます」。昨年12月20日、東京都立川市の災害医療センターに館内放送が流れた。運用開始に向けた外来患者への訓練だった。約100人の患者がいたが、大半は何もしなかった。
電通がインターネットを通じて約1200人に行った調査では、緊急地震速報の内容まで知っていると答えた人は12%にとどまる。
千葉大学工学部の山崎文雄教授による運転シミュレーターを使った実験では、前を走る車にだけ地震情報を流すと、ドライバーはあわててブレーキを踏むため、後方車の2割は回避できずに追突事故を起こした。
聖心女子大学の菅原健介教授(社会心理学)は、「突然何かしろといわれても思考停止になり、短絡的な行動しかできない。こういう時はこうするといったワンセットの情報として出していくことが大切」という。
●遅れる無線整備
情報は、衛星通信を使った総務省消防庁の全国瞬時警報システムを通じ、市町村の防災行政無線で流す計画だ。ただ、市町村の防災無線の整備は7割余りにとどまる。東京経済大学の吉井博明教授(災害情報)は「速報をどう活用するのか、受け手である自治体の取り組みも遅れている」と指摘する。
●情報格差
気象庁は「パニックを防ぐには国民への周知徹底が必要」と、国民への情報提供を当初目標より半年遅らせた。一方で、昨年8月からは鉄道や住宅メーカー、民間気象会社など約300の事業者に提供が始まっている。事業者の中には、個別の利用者に有料で情報を提供するサービスを始めたところもでている。
国の出す一つの情報を受けられる人とまだ受けられない人の格差をうんでいる格好だ。
〈緊急地震速報〉
地震が発生すると、P波(秒速約7キロ)と呼ばれる速度の速い初期微動が先に届き、その後、大きな揺れをもたらすS波(同約4キロ)が到着する。この時差を利用し、P波から揺れの大きさや到着時間を予測して地震情報を伝える。気象庁は、マグニチュード8級の東海地震が起きた場合、東京に大きな揺れが来る約40秒前に情報を出せると試算する。

