姉歯被告が控訴 耐震強度偽装事件
耐震強度偽装事件で、建築基準法違反や議院証言法違反(偽証)に問われた元1級建築士の姉歯秀次被告(49)が、懲役5年罰金180万円の実刑とした一審・東京地裁判決を不服として東京高裁に控訴した。控訴は8日付。
耐震強度偽装事件で、建築基準法違反や議院証言法違反(偽証)に問われた元1級建築士の姉歯秀次被告(49)が、懲役5年罰金180万円の実刑とした一審・東京地裁判決を不服として東京高裁に控訴した。控訴は8日付。
耐震強度偽装事件を受け、マンションの安全性への関心が高まっているが、古い基準で建てられたマンションの耐震補強にはほとんど手がつけられていない。高度成長期に分譲されたマンションの多くは住む人々も高齢化し、改修工事をした場合の費用負担の重さに意見がなかなかまとまらないのが現状だ。国は補助制度の拡充などを急いでいる。
●積み立て倍増、余生思うと「踏み切れぬ」
東京都杉並区の9階建てマンション(34戸1店舗)に住む田村晃清さん(55)は昨年、管理組合理事長になった。マンション管理会社を経営する専門家だが、その田村さんでさえ悪戦苦闘している。
築32年。区の無料簡易診断で1階駐車場の強度不足を指摘され、改修に向け精密な診断をすることは決まった。しかし、修繕積立金の残高は約2800万円。区の耐震改修補助は200万円が限度で、概算4000万円程度の補強工事をするには借り入れが必要だ。大規模修繕なども含めて試算したら、各戸毎月1万6000円の積立金が3万8000円に跳ね上がった。
補強工事には組合員の4分の3以上の特別決議が必要と考えており、合意は容易ではない。強引に進めると積立金を払わない人が出てくる恐れもある。規約を変え、理事を複数年務める覚悟を決めた。改修が済むまでかかわるつもりだ。
「ふつう管理組合理事の任期は1年で、しかもボランティア。それでは手がつけられない。強い意志のあるリーダーがいないと話は進まない」
住民の高齢化も大きな壁になる。大阪府高槻市の摂津マンション(173戸)は築40年。市から430万円の補助を受けた耐震診断で、強度が一部基準以下とわかった。
数億円をかけて改修するか、比較的余裕のある中庭を使って高層に建て替えるか。だが、高槻市は耐震改修への補助はしていない。積立金は大規模修繕で7000万円を使ってしまって余裕がない。マンションの大半は高齢者世帯で、推定平均年齢は70歳前後だ。
管理組合の茂山秋雄理事長(64)らは「せっかくカネを出しても、将来の受益者になれるのかという話もある。現状ではなかなか改修まで踏み切れない」という。
●「幸運重なった」まれな例
耐震改修までこぎつけた神戸と福岡の例は、大規模修繕に備えた住民の積立金がたまたま潤沢に残っていたことが、幸いした形だ。
神戸市中央区の三宮東ハイツ(100戸)は、79年完成の14階建て。95年の震災で壁に亀裂が入り、半壊と認定された。議論の末、1戸あたり約110万円を出し合って復旧工事をしたが、各戸毎月5000円ずつの修繕積立金は「将来のため」とほとんど手をつけなかったという。
05年2月、窓の閉まりが悪いなどの欠陥が住民アンケートで見つかり、耐震診断を実施。耐震改修は共用部分だけで済むことがわかり、費用は約2000万円。半額の補助を受け、残りは1億円余りあった積立金からまかなえた。今年2月には工事が完了する予定だ。
管理組合の村上剛理事長(77)は「ふだんからの積み立てが大事だったということ。幸運が重なった」と話す。
福岡市早良区の室見第2住宅(2棟264戸)も、2月に約1億2000万円をかけて耐震壁増設や耐震ドアに入れ替える工事に着手する。市の補助1500万円を受けた。
築30年で、震度6弱だった05年3月の福岡沖地震ではコンクリート壁の一部が崩れたり、玄関の開閉がしにくくなったりした。昨年11月、「次に震度6級が来たらつぶれる」との診断が出て、積立金取り崩しを渋っていた一部の住民も賛成に転じた。
理事長の辻紀子さん(65)は言う。「突然の大地震で意識が変わったことが大きい。ここに住み続けたいとの思いが勝った」
●支援、自治体に格差
05年秋に成立した改正耐震改修促進法などを受けて、国交省は旧耐震マンション対策に乗り出している。だが、補助制度自体がまだ広がっていない。
同省が昨年10月時点で全国の市区町村を調べたところ、マンションの耐震診断への補助を導入しているのは181自治体(全体の9.8%)、改修補助まで導入したのは69自治体(3.8%)にとどまっていた。戸建て住宅の耐震診断は965、耐震改修は497の自治体が補助しているのに比べ、取り組みの遅れが際だっている。
補助制度を持つのは早くからマンションが建った大都市部が多く、地方は対象マンションが少ないという事情もあるが、財政難の中で1棟あたりの補助額が大きくなることや、行政側に個人財産に対する公金支出への抵抗感があることも、影響しているとみられる。
国交省は来年度、改修補助率を15.2%から3分の1に引き上げる。幹線道路などに面したマンションなどが対象だが、倒壊マンションが道路をふさいで救助活動できなかったり、火災で市民が逃げ遅れたりすることがないようにするため支援する、という考えだ。
耐震改修補助を導入した自治体の担当者は「マンション耐震化は住民の命を守るだけでなく、大地震の際の被害を減らし、自治体が巨額の負担をしないようにする『先行投資』と考えるべきだ」と話している。
大地震の際の安全性が懸念される旧耐震基準(81年5月以前)で建てられた分譲マンションについて、朝日新聞社が県庁所在地や政令指定市など主要自治体での耐震診断への取り組みを調べたところ、横浜市や神戸市で8割を超えるマンションが診断を終えた一方、補助制度を持つ自治体のうち3分の1ではこれまで住民からの申請がまったくないことがわかった。自治体によってばらつきが大きく、調査対象の平均では診断実績は約2割にとどまる。診断後、実際に耐震改修まで至ったのは神戸市と福岡市の計3棟だけだった。
95年の阪神大震災では81年以前のマンションに倒壊被害が集中したとされる。不動産情報サービス会社「東京カンテイ」によると、旧耐震の分譲マンション(05年度末)は全国に2万2659棟約146万戸分あり、全体の23.7%を占める。だが、行政の支援が十分でないうえ、住民の合意形成の難しさから、補強はほとんど進んでいないのが実情だ。
震災以降、一部の自治体がこうしたマンションの耐震診断への補助を始めていたが、国が05年4月に補助制度を整備したのを機に拡大。現在、指定市、東京23区、道府県庁所在地の計72市区のうち37市区が補助制度を持っており、これらを対象に補助内容や実績について聞き取り調査した。
耐震診断が最も進んでいるのは98年に補助を始めた横浜市。1603棟が簡易診断、77棟が精密診断を終え、これは市内の旧耐震マンションの88%にあたる。「全国に先駆けて補助を始めた。実績をあげようとの意識が続いている」(住宅計画課)という。
神戸市は旧耐震の8割にあたる664棟の診断が済み、宮城県沖地震(03年)の被害を受けた仙台市も約5割、112棟の診断を終えた。東海地震への関心が高い名古屋市は06年に補助を始めたばかりだが、当初予算枠の倍を超える23棟の申請があった。
一方、旧耐震マンションが最も集中するのは東京23区で、計8184棟あるが、補助を受け診断をしたのは計149棟に過ぎない。さいたま市など12市区では補助制度創設以来、一度も使われていなかった。
専門家によると、旧耐震マンションを診断した場合、何らかの強度不足が見つかる例がほとんどという。極端な強度不足が指摘された場合、補強用鉄骨や耐震壁設置などの工事が必要だ。13の市区ではこうした耐震改修への補助制度も設けているが、実際の申請は神戸市1棟(06年度)と福岡市2棟(同)のみ。耐震診断が進む横浜市でも、ようやく初の申請が近く出される見通しだという。
耐震診断が進まないのは、いざ改修となった場合に1棟で数千万円から数億円かかり、住民の合意がなかなか得られないためだ。自治体の担当者は「築二十数年を過ぎ、すでに大規模修繕でお金がかかっている上、住人は高齢者が多い。たとえ一定の補助があっても改修後の展望が開けない」などと指摘する。
過去6年で1件も申請がないさいたま市では、「問い合わせはあるが申請につながらない。補強用鉄骨が住宅に入ることにためらう人もいる」(建築総務課)。診断結果で資産価値が下がることを敬遠する住民も少なくない、という。
国交省の現行の補助制度のもとでは、一般に1棟数百万円程度かかるとされる耐震診断は、国と市区町村が全額か3分の2を負担する例が多い。耐震改修は条件つきで補助率15.2%とされているが、上乗せをしている自治体もある。
〈マンションの耐震補強〉
81年5月以前の耐震基準は「震度5程度の地震にたえうる住宅」だったが、同年6月の建築基準法改正で「震度6強以上の地震で倒壊しない住宅」と厳しくなった。耐震診断では1級建築士らが柱や壁の強度、コンクリートの劣化などを調査し、構造耐震指標(Is)の数値で危険性を診断する。現在の耐震基準にあたるIs値0.6を下回る建物は、耐震補強が必要とされる。(1)耐震壁の増設(2)柱に炭素繊維を巻きつける(3)壁に補強用鉄骨を入れる――などの工法のほか、制震や免震工法がある。
東京都内の飲食店などで相次ぐ一酸化炭素(CO)中毒による死傷事故で、室内のCOを感知する警報器が作動しない状態になっていた例が多発していることが分かった。警報器が過敏に反応するために利用者が電源プラグを抜いて作動しない状態になっていたケースが多いとみられ、東京ガスは事故につながる濃度のCOにだけ反応するようセンサーを改良した警報器への無償交換を始めた。
COは空気中の濃度が0.16%に達すると約2時間で死亡するとされるが、色やにおいがないため頭痛や吐き気などの症状が出るまで発生に気付きにくいという。
東京ガスによると、同社管内(東京、神奈川、埼玉、千葉など1都7県の都市部)では、96〜05年度の間に34件のCO中毒事故があり、このうち19件が飲食店で発生した。03年9月には東京都新宿区のラーメン店で従業員ら2人が中毒死するなど、死者も13人出ている。
同社が事故のあった飲食店の厨房(ちゅうぼう)などを調べたところ、初めから警報器が設置されていなかった店のほかに、警報器が設置されていたものの、電源プラグが抜かれている状態の店があった。
06年に入ってからも、6月には東京都豊島区の洋菓子店で従業員8人がCO中毒でめまいなどを訴え、翌7月には中央区の日本料理店で仕込み作業をしていた従業員の男性(当時30)が死亡するなど事故が相次いだ。
いずれの事故現場でも、警報器は設置されていたが、電源プラグが入っていなかったことが分かっている。CO中毒とみられる事故は05年以降、ほかにも盛岡市や神奈川県平塚市、熊本市などで相次いでいる。警報器の設置は義務づけられているわけではなく、業務用警報器の普及率は3割程度という。
機器から8メートルの範囲でCOを感知すると警報が鳴る仕組みだが、従来の機器では、一時的に発生したCOにセンサーが反応して警報が鳴るケースもあったという。同社は「飲食店の厨房などでは、点火時に一時的なCOが発生しやすく、そうした状態でも警報が鳴る従来の機器では適さない面もあった」と認めている。
東京ガスは飲食店などでのCO中毒事故の多くは、仕込み中や片付けの最中に換気扇を止めてしまう「換気忘れ」が原因とみている。同社は「万一COが発生しても、警報器が作動すれば死傷事故を防げた可能性が高い」として、一定時間に一定量の血中濃度に相当するCOを感知すると鳴動するようセンサーの精度を高めた小型の警報器の設置を昨年11月から始めた。
東京ガスによると、同社管内の業務用の顧客は50万軒。今年度から3年間で17万軒の警報器を取り換える方針だ。家庭用ガス機器については、パロマ工業製の旧式のガス湯沸かし器で死亡事故が相次いだことを受け、東京ガスは昨年から旧式の製品の交換を進めている。
消費者被害を防ぐため、国民生活センターの相談情報データベースを各省庁とオンラインでつなぐ構想について、全国の消費生活センターの3分の2が前向きであることが、内閣府のアンケートでわかった。これまで「相談者のプライバシー保護」を理由にオンライン化に消極的な意見があったが、最近のシュレッダー事故などの影響から、個人情報に配慮する条件で容認した形だ。
この問題では内閣府の検討会が3月中に最終報告書をまとめる予定で、オンライン化実現の方向で調整が進みそうだ。
データベースは「PIO―NET(パイオネット)」と呼ばれ、国民生活センターや消費生活センターに端末がある。約920万件の被害・事故情報が蓄積されている。
経産省などは、悪質業者の取り締まりにこの情報を活用してきたが、情報を得るまでに時間がかかるため、オンライン化を求めていた。
アンケートは昨年11〜12月に全国の消費生活センター385カ所に実施。380カ所が回答した。
中央省庁へのパイオネット端末の設置について、「検索範囲や情報利用で消費者に配慮した上で、設置を認めてもよい」が62%、「消費生活センターと同等の利用を認めてもよい」も4%あった。
ただ、オンライン化による相談業務への影響では「特に影響は出ない」は12%。「工夫や配慮次第では影響はない」との回答が32%ある一方で、「影響が出てくる」も33%。情報漏れなどの心配から相談者が減るといった懸念も出たという。
国土交通省は27日、全国の分譲マンション389件を対象に行った耐震強度に関する調査の中間結果を公表した。
これまで報告のあった221件中15件が耐震強度不足の疑いがあり、うち1件は耐震基準の50%前後の恐れがある。国交省は15件の建物を所管する地方自治体に連絡、設計者から聞き取り調査を行うよう指示した。
マンションの物件名などは非公表だが、50%前後の疑いのある物件は行政が建築確認を下ろしたもので、構造計算書のデータを図面に移し替える際の転記ミスなどがあった。強度50%を切ると震度5強程度の地震で倒壊の恐れがあり、建て替えの目安となる。他の14件にも同様のミスや不自然な計算方法が見つかった。
この調査は、耐震偽装事件を受けて実施され、過去5年間に建築確認を受けたマンション約6000件から調査対象を無作為抽出。専門機関で構造計算書を再チェックしてきた。
耐震強度偽装事件で、建築基準法違反や議院証言法違反などの罪に問われた元1級建築士の姉歯秀次被告(49)に対する判決が26日、東京地裁であった。川口政明裁判長は「無責任な行為で、建築業界全体への国民の信頼をかつてないほど低下させた」と述べ、姉歯被告に求刑通り懲役5年罰金180万円の実刑を言い渡した。姉歯被告から建築士の名義を借り、無資格で設計監理したとして建築士法違反の罪に問われた秋葉三喜雄被告(46)は懲役1年2カ月執行猶予3年(求刑懲役1年2カ月)とされた。
偽装事件で起訴された6人のうち有罪判決を受けたのは、これで4人になった。
年間770万人が訪れる長野県軽井沢町で、公衆トイレをめぐって議論が白熱している。目抜き通りの通称「旧軽井沢ロータリー」の真ん中に、町が新設を計画したところ、住民有志が反発。別荘族を含む約2000人分の反対署名を町に突きつけた。共にトイレの必要性は認めつつ、「目立てばイメージダウン、目立たなければ不親切」というジレンマに揺れている。
夏場を中心に、観光客でごった返す旧軽井沢商店街。既存の公衆トイレは順番待ちの長い列ができ、場所も分かりづらいと苦情が絶えない。時には、路地で用を足す光景も見られるほどだ。
町は旧軽井沢ロータリー(430平方メートル)の町有緑地に、今年度中にトイレを新設する計画を立て、9月に三つの設計案を住民に提示した。観光案内所と臨時交番を兼ねており、15〜27の便器を配置。外観は、歴史的建造物「旧三笠ホテル」を模したり、八角形の塔があったり。町観光経済課は「新たな観光の『顔』になり得る」と自信を持っていた。
ところが、住民有志らが「トイレは旧軽の玄関口にふさわしくない」「周囲は道路なので交通事故が心配」などと反対。町は計画を延期している。署名を集めた有志代表の鈴木美津子さんは「景観を売りにする軽井沢のイメージダウンにつながる」と懸念する。
町内には「観光で潤う飲食店や土産物店などがトイレを開放するべきだ」との声もあるが、店の大半は「汚される」「防犯上、心配」と消極的。ある土産店主は「無料で貸すときりがない。客のマナーは悪いし、ボランティアではやっていられない」とぼやく。
代替地として地元住民らは11月、通りから奥まったロータリー北側を提案した。ただ、「目立つ場所でなければ意味がない」と町は否定的だ。
宙に浮いたトイレ計画だが、東京から1時間の長野新幹線効果で冬の観光客は増えている。「国内有数の観光地だと胸を張りながら、トイレ問題を棚上げしてきた。軽井沢にはホスピタリティー(もてなし)がない、とそっぽを向かれかねない」。観光業界の関係者の一人はそう心配している。
07年度税制改正で政府・与党は8日、高齢者などが安心して生活できるよう、住居内に手すりを設置したり、段差を解消したりする住宅のバリアフリー改修工事に対し、税制面で優遇する制度を創設する方向で検討に入った。既存住宅で住宅ローンを借り入れて改修した際に、改修費に応じて一定額を数年間にわたり、所得税から差し引く「税額控除方式」が検討されている。所得税額が、毎年数万円ずつ、数年間減額される方向になりそうだ。
優遇措置の適用に際しては、公的機関などから、バリアフリー工事であるとの認定を受けることを条件にする形で検討が進んでいる。
この優遇税制は、国交省が07年度の税制改正で要望している。公明党が実現を強く求めており、自民党側も容認に傾きつつある。
国交省は住宅ローンだけでなく、自己資金で改修した場合にも適用対象にするよう求めており、歯止めがなくなることを懸念する財務省との間で協議が続いている。
姉歯秀次・元建築士による偽装で耐震強度が0.5未満となり、国が建て替え支援の対象としたヒューザーの分譲マンション11物件について、国土交通省と首都圏の関係自治体は6日、原則2年間としてきた仮住まいの家賃補助の期間を、原則3年6カ月以内に延長することを決めた。
建て替え協議の難航で、被害住民は原則3分の2の家賃補助が打ち切られると懸念していた。行政側は、遅い物件で09年3月ごろの完成が見込まれる実態に合わせ、新居に入るまで補助ができるように対応を見直した。
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